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最高裁判所第一小法廷 昭和40年(行ツ)74号 判決 1966年6月23日

上告人

宮島皆一

右訴訟代理人

妹川正雄

高木英男

被上告人

検事総長

馬場義続

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人妹川正雄、同高木英男の上告理由について。

所論は、公職選挙法二五一条の二にいわゆる出納責任者とは、同法により出納責任者として届け出で且つ実際にも出納の事務に関与した者をいうのであつて、右届出はしたが実際上は何ら出納の事務に関与しなかつた者はこれに当らない、かく解しないときは、何ら責むべき理由のない当選人の当選を無効とするもので、憲法四四条の趣旨に違反するというのである。しかし、公職選挙法にいう出納責任者とは、同法一八〇条の手続により出納責任者として選任届出された者をいうのであつて、実際に出納責任者として同法に定める職務を行つたと否とには関係ないものと解すべきである。所論引用の最高裁判所の判決(昭和三六年(オ)第一〇二七号、同三七年三月一四日大法廷判決、民集一六巻三号五三一頁及び昭和三六年(オ)第一一〇六号、同三七年三月一四日大法廷判決、民集同号五三七頁)も、何ら右と異る解釈を判示したものでないことは、その判文に徴し明らかである。そして、公職選挙法二五一条の二は、右の如く出納責任者として届け出られた出納責任者が、買収等同法二二一条の罪を犯し刑に処せられたときは、その者が実際に出納責任者の職務を行つたと否とを問わず、当選人の当選を無効とする趣旨であり、かく解したからといつて、同条が所論憲法の規定に違反するものでないことは、前記大法廷の各判決の趣旨に徴し明らかである。

次に所論は、出納責任者たる訴外宮島米治は公職選挙法二二一条の罪は犯しているとは断定できないのに、上告人の当選を無効とした原判決は、審理不尽の違法があるという。しかし、同法二五一条二第一項第二号により当選を無効とするためには、出納責任者が同法二二一条の罪を犯したものとして刑に処せられたことが証明されれば足りるものであるところ、原判決によれば、訴外宮島米治が出納責任者として届け出られた者であることは当事者間に争のない事実であるというのであり、また原判決は、右訴外人が公職選挙法二二一条第三項第三号、第一項第一号の罪を犯したものとして罰金一万円に処する旨の有罪の判決を受け、右判決は確定した旨挙示の証拠により認定判示しているのであるから、原判決には何ら所論の違法はない。

論旨はすべて理由がない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(岩田誠 入江俊郎 長部謹吾 松田二郎)

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